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リリカルなのは。といいつつはやてがメイン。
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2013.08.18.Sun フェイはや
たまにはやてちゃんを書きたくなるときがありましてね、 □ 付き合い始めてもうすぐ7年になる。 年も年だし普通なら結婚して、家族になって、もしかしたら子供とかいてもおかしくないぐらいの期間。 そう思ったのは単なる気まぐれで、ベランダで洗濯物を干すはやての背中を見てしまったから。 はやては恋人で、大切な人で、私と共に歩む人。 学生の頃より髪が伸びて女性らしくなり、はやて持ち前の快活さが人を惹きつける魅力なのだと思う。 つまり綺麗だなぁって。 「なんやー」 「うぇっ?!」 洗濯物を干していたはやては振り返ることはせず、声だけで話しかけてきた。 リビングにあるソファで、はやてが作ってくれた飛び切り美味しいアイスコーヒーを飲んでいた私は急な呼びかけに変な声が飛び出た。コーヒーが塊となって飲み込み、痛んだ喉に手を当てた。 「見てるやろう?分かっとるよー」 はやては首だけで振り返り、私に向かって目を細めて笑った。 そうしてまた洗濯籠の中からタオルを拾い上げる。空に向かって両手を広げた。 パシッ 布の伸びる子気味良い音が響いた。 洗濯物の潔白さと空の青さが、とても眩しい。 もうすぐ7年。 その長さは付き合い始めのような関係のままではいられない。 あのころと同じ気持ちで緊張と照れくささを持ちながら耳元で囁き合うなんて難しいことだ。 初々しい気持ちは時間とともに少しずつ変化していって、折り合いを付けながらお互いが気楽で無理をせずに共に暮せる関係を築いてきた。 今もきっとはやてと共に将来へ向かってゆっくりと変化しているに違いなくてそのことに私は満足している。 満足はしている。 「でもなー」 「なに?」 「んー。すき」「あほか」 こんな関係も悪くはないけれど、たまには昔に戻ってみたいと思うことは私の我がままなんだろうか。 そうしなくなったのは、折り合いというところで私が折れてしまったから。 究極に照れ屋なはやてが究極に恥ずかしがり、そこで私が引くことを許してしまったから。 けれど情熱を思いのまま与えるまではしなくても、今でも私ははやてに気持ちを伝えたいし、はやての想いをはやての意思で伝えられたいと思う。 昔みたいに。 「なんやー」 「…ばか」「はあ?!」 背中を向けているはやてにちょっと不貞腐れた私は下唇を突き出した。 全て干し終えたはやてが「どっこらしょ」とまだそんな年でもないのにそんなことを言ってリビングまでやってくる。私はソファに座ったままじっとはやてを見つめ続けた。 「ねぇ、ちょっとこっちこっち」 私のテリトリーまではやてを誘う。 「どうしたん?さっきから」 不思議そうにしながらはやてはパタパタとスリッパを鳴らした。そして私を見下ろした。 ドキドキしたいよ。はやて。 そう思った頃には、感の良いはやては警戒の色を持って身を引いた。 でも早さだけならはやてに負けない自信がある。はやての左手を引いて、首の後ろに手をかけ顔を引き寄せた。 「なっ…、なになになに……」 目をまん丸くしてる。長い睫毛が重たそうに何度か伏せて、目の下を肌色から赤く染める様子を注意深く見る。 昔にしまった胸の高鳴りが蘇ってきて、頭の奥が重たく感じた。 あまり困らせたくないんだけど。 「…すき?」「はああ?!」 手ははやての首の後ろとそして腰に回して、私の膝の上にはやてを乗せた。予想通り困惑顔。 昔はもっとすごいことしてたのに。 「なに言って…」 「聞きたいの」 「いやいやいや…」 「お願い。すきって」 「と…突然どうしたんよ」 「今までが我慢しすぎだったなぁって」 「そんなこと」「あるよ」 「いや、でも、フェイトちゃんなら言わなくても分かってるやろ…」 「分かってるよ。でも、はやてだって分かってるでしょ…」 付き合いは長い。それこそ小学生のころからずっと一緒で、自分以上に相手の方が良く知っていることすらお互いに分かっているぐらい。 はやての想いなんて目を見れば分かる。 言葉にして欲しいと思う私の気持ちだってはやては十分理解しているはず。 そして今日の私はこの攻防に譲る気がないことも。 ね、と耳元で言うとはやての体が強張った。 「私は好き」 「わ、私も!す、好き好き好き、な、もう好きやから!!」 覚悟を決めたはずなのにはやては最後の最後で逃げてしまった。 それで満足できると思いますか。 「……っ」 親指の腹ではやての下唇を押して歯を覗かせる。反射的に私の舌が動いた。 追いつめてると分かってるけど、しばらく控えていた本能が顔を出してどうもうまくいかない。 はやての喉が上下に動いた。 怖がってるのか、それとも熱に浮かされてるのか、はやてはふらふらと頭を揺らした。 「す」の口を作って数秒。 「す…、す……」 ここまでお膳立てしても2文字の言葉が出てこない。 本音を冗談や演出という形で表すことは出来るけど、気持ちを気持ちのまま伝えることがどうしてもできないらしい。涙目にまでなってるんだから。強要してまで言わせるのは意味がない。 そんな形で結局折れてしまう。 ただはやてには顔出した本能の着地点に協力してもらわないといけない。 「はやてもういいよ」 今だに頑張ってすの字に尖らしてるはやての唇を軽く吸って、はいこれでお仕舞いって笑ってあげた。 「あー、なんていうかごめん……」 へなへなと力の抜けたはやては首に顔をうずめて表情を隠した。 「いいよ。無理させてごめんね」 最近してないことばかりで疲れ切った様子に、私は背中を撫でる。 「私は今のままでも十分良んやけど、フェイトちゃんを我慢させてるなら困る」 独り言のように言って、はやては私の右の小指を握った。 「大丈夫」 たまに恋人のようにじゃれてみたいと思うけれど、私も十分今が楽しい。それでもはやては首を振った。 「ちょお照れくさいから言葉に出すのは中々難しんやけど。でも態度で示すことは出来るよ」 「きす?」「あほ」 そう言うとはやては先ほど握った小指に力を込めた。 「好き?」 「…うん」 ぎゅう、と。 これからは好きと伝える時小指を握るって。 言葉の代わりにここから始めてみると提案してくれた。 今みたいに、強く、長く、大切に、 「そんなこと言ってしもうたら、手繋ぐ時いつも意識してまうけどな」 照れくさそうに笑った。 Comment Trackback この記事のトラックバックURL: トラックバック機能は終了しました。 |